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空気であり水である大切な音楽たちに触発され、物書きリハビリ中
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首筋に、冷たい唇が触れる。顎の辺りにさらさらと髪があたり、自分と同じシャンプーの匂いがした。
あたたかな舌の、感触
「ん」
腰の辺りからぞくりと震えが走り、思わず声を上げる。
「なかにし、ちょっ、まって」
「どうして?」
耳許に、低い声。かかった息に、三上はびくりと肩を揺らす。
中西は薄く笑った。
「イヤじゃないでしょ?」
「嫌とか、そうゆうんじゃなくて……!」
「じゃあ、なに?」
きれいな指先が、頬の線をなぞり、抵抗の言葉を零す唇を煽るように撫でた。次いで、中西の唇がそこに重なり、滑り込んだ舌が、零しかけた言葉を封じ込める。
「自分から誘っておいて、今更まったはなしだよ、三上」
「誘ってなんか!」
「独りはイヤだって駄々をこねて、俺を引き止めたのは誰?」
渋沢のいない部屋は広すぎると、東京選抜の合宿初日から泣いたのは誰かと、優しい声の残酷な問い。
戸惑って黙り込む三上に、中西の中で嗜虐新が暗く灯る。
三上が心の奥にしまいこんだ感情を、中西だけが知っていた。
気付いて漬け込んだのは、中西のずるさ、その手に甘えてしまったのは、三上の弱さだ。
いや、三上が最後には抗えないことを知りながら、プレッシャーをかけ続けて鎖に繋いだのは結局自分かと、中西は苦笑する。
「三上もいい加減忘れたらいいのに」
「っ」
「渋沢なんかやめて、俺にしたら?」
できはしないことなんて、初めからわかっている。
それでも時折、無理矢理にでも奪ってしまいたくなる。
けれど。
「そんな泣きそうな顔、しないでよ」
眼の前で歪む、傷ついたような、申し訳なさそうな、壊れる寸前のその表情に、いつだって『冗談だよ』と、嘘をつく。
「気の済むまで、好きでいたら?」
「中西」
「でも、わかってる? 渋沢は絶対、三上を好きにはならない」
「……わかってる」
「それでも、好きでいるの」
渋沢がストレートなのを知りながら、惹かれる心を止められなかった。今も、惹かれ続けている。けれど、ストレートだと知っているから、優しい渋沢には、決して伝えられない気持ち。
報われない想いを知る中西には、痛い程に三上の心が分かる。
沈黙で返される肯定に、中西は溜息をついた。
長い指で三上の額にかかる前髪を払う。見上げる瞳に微笑んで、柔らかな口接けを落とした。
「なか、にし……?」
「ねぇ三上。忘れないでよ? 三上が渋沢を好きなように、俺が三上を好きなこと」
「……ごめん」
「謝らなくてもいいから。言ったでしょ、身代わりでもいいって。三上、俺は三上にだったら、いくらだって利用されてあげる」
繋いだこの手の温度が、嘘だとしても。
重ねた想いが、正確に交わらなくても。
共に眠る世界が、幻であったとしても。
三上とだったら、だまされてもいい。
三上に見せられる夢なら、それが悪夢だって構わない。
渋沢を想い続ける三上のことを笑えないな、と思った。
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