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空気であり水である大切な音楽たちに触発され、物書きリハビリ中
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旧サイトのお礼SS
書きあがってないことに気付いたので、
ここで完結させたいと思います。





「三上、俺がいなくなっても、泣いたりしないでね?」

そういった翌日、俺の前から中西は姿を消した。
残されたのは、

中西愛用のライターと、
中西愛用のシルバーリング。

代わりになくなったのは、

俺のライターと、
中西が初めてくれた、シルバーリング。


さよならとありがとう 一


三上へ。

久ぶりだね、三上。
居場所は教えられないけど、俺は元気でやっているよ。
三上は大丈夫? おまえ季節の変わり目は体調を崩しやすいから、健康管理はしっかりね。

日本は今丁度桜の季節だね。
寮の庭にあった桜の老木を、2人でよく見ていたことを、この季節になると思い出すよ。
ねぇ、三上は覚えてる?
散りゆく桜を、綺麗だって言いながら、踏まれて汚れた花びらに顔を顰めてたよね。
『桜の樹の下に死体が埋まってる』
ただの伝説だってわかりながら、夜中に少しだけ土を掘ってみたよね。

ねぇ、三上は覚えていないかもしれないけど。
俺は桜よりもその下で眠ってる三上が、何よりも綺麗だと思ったんだ。
あの時おまえが眼を開けて、
ねぇ、そこから俺たちの関係は始まったんだよ?
あの瞬間の三上に出会わなかったら、きっと俺は三上の隣を望まなかった。

俺が三上の傍を離れてどれくらいが経ったのかな?
あれから三上はどうやって生きてきたのかな?

俺は色んなところを旅して、旅しながら思った。
あれは夢だったんじゃないかって。
三上を好きだと思ったことも、
三上が俺の隣で笑ってたことも、
あの夜でさえ。
全部全部、夢だったのかもしれないって。
だけど、それは違ったみたい。

三上が使ってたライターと、
三上がしてた指環。
これ、俺があげたものだったよね。
『縛られるのは好きじゃない』って言いながら、赦される場面では必ず三上はつけていてくれた。
それがどれだけ嬉しかったか、
それがどれだけ俺を縛っていたか、
三上は知らないだろう?

お別れのつもりだった。
だけど今も捨てられずにいるよ。

ねぇ、今更思うんだ。
俺はまだこんなにも三上が好きで、
俺は多分三上なしじゃ生きていけない。
消そうと思った思い出も、
捨てようと思った感情も、
忘れたはずだった三上の笑顔も、
俺は1つも手放すことができないでいるんだ。

三上の許へはもう帰れないけれど、
ねぇ、もしもまだ愛していると言ったら、俺を赦してくれる?
三上を置いていった俺を、赦してくれる?

また、手紙を書くよ。
ひとところに落ち着いたら、きっと住所も教えるよ。
ねぇ、三上が返事を返してくれなくても、
俺は三上に当てて手紙を書き続ける。
ねぇ、三上が俺を嫌いになっていても、
俺は三上を愛してるから。

中西。

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