空気であり水である大切な音楽たちに触発され、物書きリハビリ中
夜空を見上げたら、月が大きかった。
東の低い位置、少し歩を進めればすぐ建物に隠れてしまう、満月まであと少しの。
紅音はポケットから携帯を取り出してカメラを起動させた。
車の来ない道路に出てレンズを空に向ける。
「…………」
一世代前の携帯カメラは画素数が低く、円やかだった輪郭が滲んだ。荒い画面では闇も薄色に塗り替えられて、安っぽい水彩画めいた小さな風景に溜息をつく。
道路の先で曲がってきた車の光がちらついて、紅音は携帯をしまって歩道に上がった。
月を切り取ろうなんて、最初から無理な話だったのだ。
けれど紅音はいつか月に触れることができると思っていた。
自分は、かつて月棲んでいた。
人はみな御伽話だとか前世占いを信じすぎだとかいうけれど、紅音にとってそれは夢物語などではなく、当たり前の感覚だったのだ。
短編、書きたい。
長編は気力を使うから無理だー。
出だしだけ、書いてみた。
どう展開させようか迷う。
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