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空気であり水である大切な音楽たちに触発され、物書きリハビリ中
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空を見下ろす。
遠い遠い地面にへばりついた、蒼。
小さな、空。
空の縁にはたくさんの人が立って、あたしを見上げていた。

あたしは堕ちる。
空に、堕ちる。

イメージだけが先に、遥か下方の空へ飛び込んでいく。

 


あたしのココロは冷たい。きりきり痛いくらいに、冷たい。あたしの周りを今吹き抜けていく風に冷やされたみたいに、冷たくなって、からからに乾いて、罅割れてしまいそうだ。
いつからだったろう。繰り返し繰り返し、思ったんだ。
こんな世界、いらない。あたしなんて、いらない。死にたいとかそうゆうんじゃなくて、消えたいって。誰にも必要となんかされてないなら、消えちゃいたいって。
あたしがいなくなって、そしたら誰かが泣いてくれたりするのかな。そうやってココロに疵となって残るのもいいな。でも、できるならあたしが存在した記憶ごと、ぜんぶぜんぶ、あたしというものがなくなってしまえばいいのにって、何度も思った。
冷たい痛み。
誰も知らない、あたしの痛み。
だって、考えてもみなかったでしょう? あたしのポーカーフェイス、見破ってくれた人はいなかったもの。それとも、それはあたしが気づかなかっただけ?
誰かが言ってたっけ。人は誰もが一人で生まれてきて、そして死ぬときも結局は一人なんだよって。淋しくて仕方がなくて、だから自分以外の熱を求めて、寄り添い合うんだって。
でも、あたしには何かを共有してくれる人がいない。共有したい人がいない。
だってあたしの中は真っ黒で、どろどろで、誰かに触れたらその人まで穢してしまいそう。あたしのそういった部分も含めてあたしを抱きしめてくれる人なんて、いない。だったら不用意に触れてキレイなものを汚すくらいなら、あたしなんていらない。
世界がキレイなもので多い尽くされてるなんて幻想みたいなこと、言わないよ。ううん、この世界にはキレイなものなんてほんの一握りしかないと思ってる。でも、だからこそ、そのキレイなものにあたしの汚れを移すことはしたくないんだ。
それは、あたしの中の、きっと唯一のキレイな部分。
ただのエゴかもしれない。だけど、あたしはこれ以上あたしとおんなじ痛みと穢れを、ここに広げてはいけない。触れたくても触れられない眩しいくらいの笑顔を、見ていたいから。
ああ、でもそれを見続けることは、あたしには叶わないんだ。
かろうじて脈打っていた何かが、苦しいと叫ぶ。これ以上は無理って叫ぶ。
からりと乾いたココロが、罅割れる音が聴こえるの。痛みに耐えられなくて、かさついた悲鳴を上げるの。
ここにいてはいけないと、あたしを追い立てる。
だからあたしは堕ちる。
この空の中へ、堕ちるんだ。
屋上に吹く風は冷たくて、錆びついた手すりはざらざらしていて、でも、空だけはさっきまでの雨を感じさせないくらいに高く、蒼い。
あたしが今まで見た中で、一番キレイな、空。
ああ、でもいつだってみんなの上にはこの空が広がっていたんだ。あたしの中の重たい何かがきっと先に落ちてしまって、そうしてようやくあたしは、本当の蒼さを知れたんだね。

汚いあたし。
愛されないあたし。
自分が大ッ嫌いなあたし。
世界なんていらないあたし。
世界にはいらない、あたし。

そんなあたしが、この空に落ちて溶けることはできるのかな。あたしの穢れをぶちまけてしまうだけではないのかな。
でも、それもいいか。
一点のシミになって、青空を汚して、そうしたらあたしのことを知るすべての人の記憶からあたしがいなくなったとしても、あたしはあたしを見てもらえる。
ぜんぶ、持っていくよ。記憶も、ここに存在した証もぜんぶ引き連れて、空に堕ちるの。
地上に広がるあの小さな、でも本当はどこまでも広い空の中へ、あたしはうまく堕ちていけるのかな。人が見上げるあの中心で、あたしは上手に空の中へ消えることができるのかな。
でも、誰かがあたしの背中を押すの。
ココロのドアに拳を痛いくらいにぶち当てて、ここは苦しいから早く何もないあの蒼い場所へ出してって叫ぶの。

風が、冷たい。
手すり、ざらざらする。
下から、みんなが見てる。
ココロが割れてく音がする。
小さな空が、見える。
そして、

    あたしは、
           堕ちる。
      
 
        空に、
                 堕ちる。







そこにいた人々は、すべてを見ていた。
彼女が手すりを乗り越える瞬間も、足元のコンクリートを蹴る瞬間も。
誰かが息を呑む、音がした。
真っ直ぐに地面の水溜りに、彼女が落下する。


         落下、する。
           水の中の小さな空へ。










大学3年生か4年生の時に書いたやつが出てきたので上げてみた。
自分の中では結構好きな作品。
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